以前の記事でも述べた通り、今回私は新宿で炒飯をつくるという経験をした。
たかが炒飯ごときと突っ込みたい人がいることは重々承知している。
しかし、もう何年間も包丁を握ったこともなく、そもそも料理らしい料理などをつくったことがない私にとってはそもそも「人に食べてもらう」という時点で相当ハードルが高かった。
周囲からは「自炊したら」という声も聞かれたが、私はその言葉を受け入れようとはしなかった。
私から言わせれば、美味しい料理をつくって他人にごちそうしたり、疲れて帰ってくる恋人のためにちょっとした軽食をつくっておくといったことは理解できるが、単に節約のためだけに三度の食事の準備をするなど考えたこともなかったし、何日間も作りおきしたカレーを食べ続けることを得意気に話す知り合いをみて、若干ひきさえしたものだった。
要するに、私にとって料理というやつは、あくまで食べてくれる人がいるからこそ取り組む価値のある作業であったのであり、この考えは今でも根本的には変わっていない。
自分のためだけに料理をつくるときもあるにはあったが、それはあくまでも普段大学の食堂では食べられないもの食べたいからであり、食費がかえってかさむのが常であった。
そんな私が料理をはじめたのはなぜか?
それは先月新宿で飲んでいた際、「料理ができるキャラ」をつくってしまったからである。
一緒に飲んでいた知り合いは皆料理をかなりやるということであったので、その時私は「実はもう何年も包丁を握ったこともなくて・・・」とはとても言えなかった。
この話はその場で終わり、すぐに別の話題にうつると思われたが、予想に反してかなり盛り上がりを見せた。
そして、「ユウキさんに次回なにかつくってもらおう」ということになったのである。
簡単につくれるということで、つくるメニューは炒飯に決まった。
恥ずかしながら、私はこの時炒飯をどうやってつくるかさえ知らなかった。
仕方がないので私はまず炒飯の素を用いて炒飯をつくることにした。
ご飯と卵でつくれるタイプのやつである。
ステーキを焼いたことがあるので幸いフライパンと油はあったが、それ以外の調味料はなく、計量カップさえ見あたらないというありさまで、私は料理の前に材料や道具を買いそろえなければならなかった。
こういうものを一式そろえるとそれなりの値段になるが、そこは気にせず買いそろえた。
まずはご飯を炊かなければならない。
幸い炊飯器でご飯をたくことは問題なくできた。
まあ洗ってスイッチを押すだけだから当然といえば当然であるが・・・。
つぎに卵をフライパンに落としてスクランブルエッグをつくる。
玉子をフライパンに落とすなんていうのは大学時代は一度もやらなかったことであり、かきまぜた液状の玉子が固まっていく様子をみていると、なんだかおもしろかった。
そこにご飯と炒飯の素を入れれば完成となる。
まあ味の方は期待していなかったが、炒飯の素というやつもわりとおいしくつくれるんだなという印象を持った。
こんな調子で数回つくったあと、今度は炒飯の素を使わずにつくることにした。
本番は炒飯の素を使うわけにはいくまい。
ネットで探して、よさそうな(美味しそうで、かつ簡単につくれそうそうな)ものを探していくつか挑戦してみることにした。
しかし、ここで新たな問題が・・・。
今度は用いる野菜等の下ごしらえをしないといけない。
さすがに皮をむくことぐらいはわかったが、家庭科の授業以降はやったことがない作業であり、気が重くなった。
しかし泣き言を言っても仕方がないので、皮むきの道具を使って作業をはじめた。
なかなかうまくいかず苦労したが、なをとか皮をむいた。
つぎに材料を切っていくわけだが、ここでも問題が・・・。
レシピには「○○を△△切りにして」などと書かれているわけだが、私はそこにでてくる用語がわからなかった。
ネットで用語を調べながらの作業となった。
家庭科で習ったとは思うが、忘れてしまっていた。
下ごしらえが終わり、材料を炒め、完成した時にはかなりの時間がたっていた。
本番までにこれをつくるのかと思うと気が重くなったが、まだ本番までは一ヶ月近くあったので、頑張ることにした。
頑張るといっても毎日炒飯では飽きてしまうので、週一回のペースでつくった。
回を増すごとに時間が短縮でき、やりがいはあった。
(炒飯ごときで調子にのるな!というご指摘はおやめください(笑))
本番ではレシピをみないでつくる必要があったが(別にみるなと言われたわけではないが、なんだか格好悪い気がして見ないと決めていた)、これも何回かつくっているうちに覚えることができた。
そんな感じで本番をむかえた。
材料は予め買ってもらっていたから、当日の私はただつくるのみであった。
マスターさんが、酒の準備などをしている横で私は黙々とつくり続けた。
普段使っているキッチンとは異なる点に戸惑うこともあったが、なんとかつくることができた。
マスターさんと店子さん、Sくんと私の4人で食べた。
彼らは美味しいものを食べなれているから、私がつくった炒飯がおいしいと思えるとは考えられなかったが、「おいしい」といいながら全部食べてくれた。
私が後片付けをしようとすると、「いいよ。やっておくから」とマスターさんに言われた。
僕は「いえ、後片付けまでが料理ですから」と生意気なことを言って後片付けをした。
この店の開店まではもう少し時間があったので、「また後で」と一旦外に出て、スターバックスで休憩することにした。
そうそう、この話には思わぬ(いや、ある意味当然ともいうべき)おちがある。
その日は六時前まで新宿で飲み明かし、ほろ酔い気分で(いや、かなり酔っていたかな)新宿駅へ向かう途中、Sくんは僕にこう言った。
「ユウキさんは、本当は料理できないでしょ?」
「え?」
当然僕は焦った。
Sくんは続けた。
「だって普通は得意料理に炒飯は挙げないよね」
確かにその通りである。
僕は何も言えなかった。
そしてSくんは続けた。
「ユウキさんが、以前誰かつくってあげる相手がいれば・・・、って言っていたから、○○さん(マスター)と相談して、今回のような企画をやってみましたあ、てへぺろ。」
なるほど、これが、「てへぺろ」の正しい使い方なんだなあ・・・。
いやいや、そういう問題ではない。
結局僕はSくんの手の内で踊っていたということなのだ。
いつもながら彼には叶わないなあと思う。
僕がわかりやすいだけなのかもしれないが、よく考えていることを見透かされてしまう。
その言葉を聞いた僕は思わず、「ごめんね。いろいろ迷惑かけて」と言った。
これに対して彼は首を横に振り
「頑張って練習したんだろうなあと思った。愛情がこもっていて本当においしかったよ。」
と言った。
愛情はともかく、そう言ってもらえてよかった。
その後、「じゃあ6月までお互い頑張ろう」と言って別れたのであった。
振り返ってみると、「だまされた」という感覚は全くない。
むしろ、今回料理をする機会を得、他人につくる喜びも知ることができてよかった。
次回はSくんが何かつくってくるという。
彼の料理を楽しみにしながら新幹線に乗り込み、東京をあとにした。
(ウォーキングフェスタ東京の参加記はまた後日アップします)
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